スペインとイタリアの飼料団体が今年から、現地の高品質な飼料作物を日本の酪農家に知ってもらいたいと、合同プロジェクトを開始した。プロジェクト名は「EU乾燥脱水飼料作物」キャンペーン。EU(欧州連合)の資金援助を受け、2026年までの3年間にわたり、日本で開かれる見本市への出展やセミナー・ワークショップの開催、欧州への現地視察旅行など、さまざまな活動を展開する。日本の輸入粗飼料は米国、豪州、カナダの3ヵ国産が大半を占めるが、価格はここ数年高騰している。新たな調達先としてEU産への関心が高まる可能性がある。
プロジェクトの主催団体はAEFA(スペイン乾燥脱水アルファルファ製造者協会)とFILIERA(イタリア飼料作物コンソーシアム)。前者は、スペインの乾燥脱水飼料作物セクターを代表する唯一の組織で、現地製造業者の90%以上(57者)が加盟しプロモーション活動を展開している。後者はAIFA(イタリア乾燥脱水飼料協会)の関連団体で、現地の生産者や商社など25社が参加、AEFAと同様、主にプロモーション活動を行っている。今回のキャンペーンは日本のほか、台湾、ベトナム、インドネシアのアジア4ヵ国を対象に実施する。
乾燥脱水飼料作物(Dehydrated Fodder)とは、天日干しではなく、加熱処理により水分を調整したもの。収穫後に畑で2日ほど乾かした後、「乾燥脱水機」「人工扇風機」などと呼ばれるドラム状の専用機械に投入し、90~250度の高温で5~20分間加熱処理する。天日干しのように天候に左右される心配がない上、品質を均一化することが可能だ。加熱処理によりカビや菌類、害虫などが除去されるため、衛生的で安全性も高い。ドラム部分が回転することで、砂や土、石などの不純物も取り除かれる。高品質で衛生的な粗飼料は嗜好性が高く、乳牛の健康や乳量増加につながる。
乾燥脱水飼料作物という言葉は、日本では聞き慣れないが、今回のプロジェクトでは、すでに日本に多く輸入されている天日干しの飼料作物と差別化するため、この言葉を使用することになった。
乾燥脱水飼料作物は欧州では一般的で、なかでもスペインとイタリアの生産量(多くがアルファルファ)はEUトップ2を誇る。両国の製品は欧州を中心に広く流通しており、乾燥脱水アルファルファの輸出量はスペインが年間138万㌧、イタリアが59万㌧にのぼる。ただ、両国の日本への輸出量はともに3万㌧台にとどまるのが実態。日本への粗飼料輸出量トップ3の米国(106万㌧)、豪州(45万㌧)、カナダ(18万㌧)とは大きな開きがある。
こうした現状を受け、AEFAとFILIERAは今回のプロジェクトを通して、EU乾燥脱水飼料作物の特徴をPRし、日本での認知度向上を図りたい考え。「プロジェクトのキーワードは『自然な栄養をヨーロッパの大地からコップへ』。EU乾燥脱水飼料作物の品質や栄養価の高さに加え、乳牛の健康や生乳生産に貢献できることを日本の酪農家ら関係者に知ってもらいたい。非遺伝子組み換え作物なのはもちろん、除草剤や農薬の使用量も極めて少ないし、窒素肥料を使用していないため、硝酸塩による水質汚染の心配もない。農村部の景観維持や地域経済・社会を支える役割も果たしている」としている。
今回のプロジェクトで紹介する乾燥脱水飼料作物は①乾燥脱水アルファルファベール②乾燥脱水アルファルファペレット③乾燥脱水ライグラス―の3種類。まずは10月9~11日に千葉市の幕張メッセで開催される農業・畜産関連見本市「農業WEEK」にブースを出展しPRする。専用ホームページでも乾燥脱水飼料作物の詳細な情報を発信している。問い合わせは、今回のプロジェクトの専用メール(japan@eufodder.com)まで。
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