スペインの飼料団体・AEFA(スペイン乾燥脱水アルファルファ製造者協会)のルイス・マチン・アルバレス氏(ディレクター)と、FILIERA(イタリア飼料作物コンソーシアム)のリカルド・セベーリ氏(副会長)がそろって来日し、酪農スピードNEWSの単独インタビューに応じた。日本市場でのEU(欧州連合)産乾燥脱水飼料作物の認知、普及拡大に向け、他国以上に徹底管理された品質や安全性などをPRした。両氏は今月、千葉市で開かれた農業・畜産関連見本市「農業WEEK」の出展に合わせて来日した。
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―両団体は今年から、EUの資金援助を受け日本などアジア4ヵ国への輸出拡大に向け、「EU乾燥脱水飼料作物キャンペーン」を開始しました。農業WEEKへの参加はその一環で、初出展だそうですね。
マチン 私は訪日自体初めてです。今回の出展を通して日本のディーラーや農家、関係団体の人たちと様々な話ができました。来日前には日本の酪農の複雑な現状や飼料市場などについてリサーチし、我々の製品(乾燥脱水飼料作物)が日本の市場でも競争できると感じていました。私たちが日本でビジネスを展開するチャンスが今あると思っています。
セベーリ 農業WEEKでは、将来のパートナーになる日本のインポーターや仲介業者、配送業者など様々な業界の方と話し、意見交換しました。これをきっかけに、飼料に関わる業界の人たちから我々や製品のことを日本で広めてほしいと思っています。
―日本などへの輸出拡大を考えているスペインやイタリア産乾燥脱水飼料作物(主にアルファルファ)の特徴を教えてください。
マチン まず大きな特徴として機械的なシステムを導入していることです。日本や米国では天日干しの飼料が主流だと思います。EUでは乾燥脱水の機械を使用しており、天候にほとんど左右されないことなどから、安定供給が可能です。この機械により虫や不純物などを取り除けるため、動物(家畜)が食すのに必要な安全性も担保されています。また、EUのアルファルファは成分も優れており、生乳生産に必要なタンパク質をはじめとした多くの栄養素を含んでいます。EUスタンダードは他国のものと差別化できます。
セベーリ 製品への規制基準はもちろん、GMP+(飼料等の適正製造規範)の認証取得やHACCP(危害要因分析重要管理点)などにより、生産工程や分析に対しても徹底的に管理されており、トレーサビリティが可能なのも強みです。健全な生産工程を踏むことで、製品の品質を高め、動物(家畜)そして人間の健康に寄与できる製品になっています。
―乾燥脱水機を使用した生産工程について、詳しく聞かせてください。
マチン まずは畑からアルファルファを収穫後、2~3日天日干しして工場に運びます。工場での脱水乾燥の前に近赤外線などでタンパク質レベルや水分量を分析します。検査を経て、工場到着から24時間以内にトロンメル(回転式選別機)で乾燥脱水を行います。適切な水分量に調整するので品質は1年間変わりません。この生産方法はスペインやイタリア以外のEU諸国でも一般的です。約250度の熱風で作物を乾燥脱水することにより、ある程度の水分を除去すると同時に、菌や害虫、不純物を取り除くことができます。約250度で約5分間、高温処理しますので、飼料作物は除菌され、極めて衛生的です。
―両国ともEUの厳格な品質基準に沿ってアルファルファを生産しているのですね。
セベーリ その通りです。従ってスペインとイタリアで機械や乾燥方法について特に違いはありません。イタリアはスペインと比較すると畑の面積が狭いので、アルファルファそのものの育て方は少し異なるかもしれません。播種のローテーションは4~5年に一度です。基本的に灌漑作業は行いません。イタリアの文化として雨水だけで栽培します。イタリア産の非遺伝子組み換えの種を用い、化学肥料は使用しません。自然な状態で育てます。
マチン スペイン産のアルファルファは95%がスペイン北部で生産されています。生育には日差しと水が必要不可欠です。北部はフランスとの国境に連なるピレネー山脈などにより水が豊富にあります。我が国も生育に化学肥料は使わず、種はGMOフリー(非遺伝子組み換え)です。EUの基準は厳しいですが、それを守ることで安全な飼料を農家に届けるという使命を果たしています。
―日本では米国やカナダ、豪州からの牧草輸入量が多く、スペインやイタリアが活発に輸出していることを知らない人も多いと思います。
マチン 米国は飼料作物の最大生産国として知られていると思いますが、スペインとイタリアも世界で5本の指に入る存在です。両国は55ヵ国以上へ輸出しています。具体的には、アラブ首長国連邦やヨルダン、サウジアラビアなどの中東諸国、中国や韓国などのアジアへも輸出しています。これらの国々では乾燥脱水飼料作物が一般的と認識されており、多く使用されています。
セベーリ イタリア産の牧草は、FILIERAに属する生産者によって国内全体の90%が生産されています。そのうち40%は国内向け、残り60%は輸出向けです(内訳は60%がアルファルファ、40%がライグラス)。主に中東が多く、アジアでは中国向けがトップシェアで、北欧にも輸出しています。
―日本への輸出拡大に向けては、どのようなPRを考えていますか。
マチン 日本の関係者をスペインやイタリアへ招待する予定です。飼料作物の乾燥技術が進化しており、設備が最良であることをぜひ実際に見てほしいです。成熟した日本市場では、どのようにスペインやイタリアの飼料作物が生産されているのか、より知ってもらう必要があります。同じく我々もさらに日本市場を理解したいので、ワークショップなど情報交換の場を設けたいと考えています。
セベーリ 大切なのは日本の酪農家にとって、最終的にどのような経済的効果があるのか理解してもらうことです。例えば、購入価格だけをみて安価な飼料を選ぶと、そこには品質が伴わない可能性があります。栄養価が低いと生産性や動物(家畜)の生命に影響しかねません。動物が健康に過ごすことへの投資は必要です。品質向上のために生産工程を多くとっており、その付加価値が「売り」になると思いますので、積極的にアピールしていく考えです。
―日本の未来のユーザーへメッセージを。
マチン 我々の製品は「品質」「安全性」「サステナビリティ(持続可能性)」に長けています。我々は日本の輸入飼料市場を活性化し、日本酪農の生産性を向上させるため、競争力のある価格で高品質な製品を提供していきたいと考えています。
セベーリ 日本人がEU産チーズを好きなように、イタリアをはじめとしたEU産飼料作物もぜひ試してほしいと思います。我々の製品は品質に優れ、非常に栄養価が高く、再生可能エネルギーの活用など環境へも配慮しています。人にも動物(家畜)にも環境にも、健康的で優しい製品を提供することができます。私たち(EU)の畑から、日本の皆さまの食卓(テーブル)へ自然な栄養を届けていきたいと考えています。